人生でいちばん大きなお買い物

ここに綴られた短編ストーリーは、実際にマイホームを叶えられた方々やTHRグループの社員に取材した事実を基に作られました。「家」をめぐるちょっと笑えるお話、思わず泣けるお話、なんだかほのぼのするお話をお楽しみ下さい。

僕が携わる不動産仲介の営業には〝ご案内〟と呼ばれる仕事がある。お客様のご希望や条件に合わせてピックアップした物件を実際に見ていただくために、現地へとお連れすることだ。〝ご案内〟には大きく二つの目的があると僕は思う。まず一つ目は、間取り図や写真ではわからない物件のディティールから周辺の環境、街の雰囲気まで、お客様ご自身の目で確かめ、肌で感じてもらう──まぁ当然といえば当然のこと。二つ目はそうやって〝ご案内〟を何度か重ね、いろんなタイプの物件を見ることで、お客様に物件のトレンドとエリアごとの相場観を学んでもらうことだ。どんな物件が一体どのくらいするのか?──その感覚を養うことは、お客様が心から納得した上で間違いのない選択をするために、きちんと踏むべき大切なプロセスと言える。のだが、「住まい」探しの現場では、これが上手に踏めないこともあるのだ。
「……後で現地の方へ行ってみます。はい、ありがとうございます」
懇意(こんい)にしている売主さんから公開前の物件情報をいただいた。中央線沿線の人気エリア、駅から徒歩五分、大通りから道を一本隔てた閑静な住宅街、間取りや仕様が選べるフリープラン──現地へ向かう車の中で欠点を探してみたがほとんど見つからなかった。
現地はまだ造成されたばかりの更地で全区画が緑豊かな森林公園に面していた。とくに東側の端に位置する正方形に近い区画は、少し公園に突き出した形になっていて、正面以外の三方向から森林を臨む絶好のロケーションだ。
「……あの、すいません」
背後からの声に振り向くと、三十代に見える男女がそれぞれ自転車に乗ったまま僕を見ていた。

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